まとめ

作業:2014/11 掲載:2014/12/04

動作試験で分かったこと:

 (1)20[W]程度の出力は充分取り出せる。 → Atom系などの省電力マザーの電源には使えそう。
 (2)+12V がちゃんとOFFできていない。 → 今回のマザーではたまたま問題なかったが…。
 (3)電源OFF時、PS_ON端子に8[V]以上もの電圧が出ている。→ マザーに悪影響は?
 (4)電源ON時、PS_ON端子から 12[V]/(1.2+1.2)[kΩ]=5[mA] もの電流が流れ出す。 → マザーに悪影響は?

最大の問題は(2)だ。(3)(4)についてはその後で考える。


12Vラインの回路図をあらためて見てほしい。

電源OFFの要件

電源OFF時、PS_ON端子は浮いた状態。R00でプルアップされているので Vin に引っ張られて、高い電位になっている。
コレが完全に +12[V](Vinと同電位) ならば、

 Q1のVGS=0[V]

となるので、Q1は完全にOFF、つまり

 Vout=0[V]

となるのだが、現実には電流 Ictrl がいくらか流れるので、R00による電圧降下が生じ、VGSはゼロにはならない、
従ってQ1も完全OFFにならない、ということ。


コレを解決するには部品を追加して、Q1のゲートとDC-DCモジュールのOn/Off端子を切り離せば
いいのだが、基板上はもうかなり詰め詰めで、部品の追加は厳しい気がする。
そこで姑息な手段だが、R01の値を大きくして Ictrl を減らすことを考える。

この Ictrl 、測った電圧から計算すると内訳は

 @各DC-DCモジュールの On/Off端子の吸い込み電流 1.2[mA]
 AマザーボードのPS_ON出力の吸い込み電流 0.5[mA]

   計 1.7[mA]

からなる。(ただし、Aはマザーボードによって違ってくる。)

今回使ったDC-DCモジュールは、On/Off端子を
 GNDに落とすと出力ON、ある値以上の電圧をかけるとOFF
する仕様である。

「ある値以上の電圧」とは具体的には
 OKL-T/6-W12N-C、OKL-T/6-W12N-C: +3.5[V]以上
 MCWI03-12S12: +2.7[V]以上
であることがデータシートから読みとれる。

余談だが、MCWI03-12S12 のOn/Off端子の吸い込み電流は、標準で 1[mA]、最大2.5[mA] とデータシートにある。
つまり上記@はほとんど MCWI03-12S12 によるもので、OKL-T/*-W12N-C のOn/Off端子の吸い込み電流は
ごく小さいことがうかがえる。


つまりすべてのDC-DCモジュールをOFF状態に保つためには、On/Off端子の電位 VPS_ON が +3.5[V] 以上になるよう、
R00とR01を設定する必要がある。R01はやたら大きくできないのだ。前述したとおり電源ON時の VGS との兼ね合いもあるし。

上記の要件を式に表すと、
 Vin - (R00+R01)Ictrl > 3.5[V]

コレに Vin = 12[V]、R00=1.2[kΩ]、Ictrl=1.7[mA] を代入し、R01について解くと、
 R01 < 3.8[kΩ]
となる。E12系列から選定すると、3.3ないし3.9[kΩ] か。

実際には Ictrl は1.7[mA] 一定ではなく、R01を大きくするにつれて減少するから、R01の値はもっと大きくても大丈夫なはず。

取り替えてみた

R01を 手持ちの3.9[kΩ] に取り替え、あらためてデータ採り。

R01=3.9[kΩ] PSU単体(マザーボード無) 実負荷(マザーボード有)
電源OFF時 電源ON時 電源OFF時 電源ON時
ACアダプタ電流 Iin 0..049[A] 0.158[A] 0.082[A] 2.21[A]
ACアダプタ電圧 Vin 12.25[V] 12.22[V] 12.24[V] 11.60[V]
+12V 4.695[V] 12.22[V] 0.608[V] 11.47[V]
+5V 0.000[V] 5.015[V] 0.649[V] 5.019[V]
+3.3V 0.000[V] 3.312[V] 0.434[V] 3.312[V]
+5VSB 5.015[V] 5.017[V] 5.018[V] 5.019[V]
-12V 0.000[V] -12.06[V] 0.000[V] -12.06[V]
PWR_OK 0.000[V] 3.554[V] 0.000[V] 3.528[V]
PS_ON 7.50[V] 0.000[V]
(GNDに接続)
6.52[V] 0.078[V]

赤字部分。R01=1.2[kΩ] のときに比べて、ずいぶんマシになったのが分かると思う。
R01を大きくすることにより気になるのは、電源ON時におけるQ1のVGSの低下だが、

VDS=11.60−11.47=0.13[V]
PD=0.13[V]×1.25[A]=162.5[mW]

R01=1.2[kΩ]時 0.05[V]、62.5[mW] だったから、やはり影響はあるようだ。とはいえ許せるレベルだと思う。

また、ページ冒頭で挙げた問題点(3)についても、PS_ON端子の電圧(青字)を見る限り、改善されたと見て良いだろう。
同じく(4)についても、R01の増加分だけ電流が減っているわけだから、良い方向に変化していると言える。
いずれも充分かどうかは分からないが。

かかった費用

購入した部品の一覧をまとめた。

デバイス# 型番 個数 単価 価格(税込) 購入店 備考
DC-DCコンバータモジュール OKL-T/6-W12N-C 2 600 1,200 秋月電子通商
OKL-T/3-W12N-C 1 500 500 秋月電子通商
MCWI03-12S12 1 800 800 秋月電子通商
Q1 2SJ471 1 200 200 秋月電子通商
DCプラグ MP121C 1 60 60 秋月電子通商
DCジャック MJ-14 1 60 60 秋月電子通商
万能基板 18×24 2.54mmピッチ 1 90 90 Aitendo
C00,10,,20,30 10μ 25V 積層セラミック 4 20 200 秋月電子通商
C11,21,31 10μ 10V 積層セラミック 3 10μF 25V(10個セット)
で代替。
C40,41 3.3μ 25V 積層セラミック 2
R00,01 1.2kΩ 1/4W カーボン 2 1 -- 手持ち
R02 100kΩ 1/8W カーボン 1 -- -- 手持ち
R10,20,30 1.2kΩ 1/8W カーボン 3 -- -- 手持ち
Rt1,3 1.33kΩ 1/8W 金属被膜 1% 2 1 100 秋月電子通商 680Ω×2
100本セット。
Rt2 2.18kΩ 1/8W 金属被膜 1% 1 1 100 秋月電子通商 2.2kΩで代替。
100本セット。
電源入力コネクタ 基板側♂ 6P 1 -- -- 手持ち
電源入力コネクタ ライン側♀ 6P 1 -- -- 手持ち
ペリフェラル出力コネクタ 基板側♂ 4P 1 -- -- 手持ち
ペリフェラル出力コネクタ ライン側♀ 4P 1 ヤナイ無線
MB出力コネクタ 基板側ピンヘッダ 20×2P L形 1 100 100 秋月電子通商
MB出力コネクタ ライン側♀ IDEコネクタ 1 -- -- 手持ち
ATX電源コネクタ 20P 1 -- -- 手持ち
放熱器 TO-220用 1 56 56 ヤナイ無線
コネクタ用コンタクト SXH-001T-P0.6 1 216 216 ヤナイ無線 50個入り1袋
4Pコネクタ 1 12 12 ヤナイ無線
3,694

この費用はどうなんだろう…。
Pico-PSU の 90Wタイプなら¥5,000+税 で買えてしまうし、

そもそもコレ、当初の目的であるこれ↓

に収まるのか…。

…あれ?
俺今回、ハンダ付けで遊んだだけ………?

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