動作試験

作業:2014/11 掲載:2014/12/02

できあがったら適当なACアダプタとマザーボードをつないで、とりあえず使えるかどうか確認してみる。
とはいえ焦りは禁物。最初に電源を入れる前に1日置き、頭が冷静になってからあらためて
結線に誤りがないことをよ〜〜〜〜〜〜〜っくよく確認する。
何しろ一歩間違えれば今までの苦労がすべてパーになりかねないのだから。

単体試験

で、火入れ。
12V出力のACアダプタ

は、とりあえず手元にあったやつで間に合わせる。12V 3.33A つまり40Wタイプ。

合うDCジャックが無いんで、DC取出しはミノ虫クリップで。

内側(+側)の取出しには、適当に折りたたんだスズメッキ線を差し込んで使う。


まずはPSU単体で動作確認。電源OFF時(PS_ON端子を浮かせた状態)、電源ON時(PS_ONをGNDにつないだ状態)で、
それぞれ各端子の電圧を、デジタルテスタで測った。

電源OFF時 電源ON時
ACアダプタ電流 Iin 0..049[A] 0.161[A]
ACアダプタ電圧 Vin 12.25[V] 12.21[V]
+12V 12.23[V] 12.21[V]
+5V 0.000[V] 5.014[V]
+3.3V 0.000[V] 3.312[V]
+5VSB 5.017[V] 5.018[V]
-12V 0.000[V] -12.06[V]
PWR_OK 0.000[V] 3.553[V]
PS_ON 9.37[V] 0.000[V]
(GNDに接続)

有効数字が3桁だったり4桁だったりするのには目をつぶって欲しい。デジタルテスタの仕様である。

見てのとおり、「電源OFF時」にも、+12Vの電圧が出っぱなしである。
これは、
+12VのOn/OffはFET(回路図のQ1)で行なっているが、電源OFF時にもQ1のゲート−ソース間電圧 VGS
ゼロになっておらず、Q1のドレイン電流IDがわずかながら流れてしまうため。

要は高抵抗を介して負荷につながっているのと同じなので、負荷がテスタのみだと電源側の電圧がそのまま
出てきてしまうのだ。負荷抵抗がある程度低い状況になれば、電圧はもっと下がる…と思う。

この回路では、VGSは下の式の通りとなる。

VGS = (PS_ON - Vin)R00/(R00+R01)

実際の値を当てはめると、

V
GS = (9.37-12.25)×1200/(1200+1200) = -1.44[V]


Q1に使った 2SJ471 のデータシートを見ると、この VGS では ID はほとんどゼロに見えるが、
(データシートから転載。)
何しろ縦軸(ID)が10アンペアオーダーだから、実際のIDはけっこう流れているんじゃないか。

これを抑える方法の1つは、 R01 の 1.2[kΩ] をもっと大きくすることだ。そもそもこの 1.2[kΩ]という値は低すぎると思う。
もちろんこれには理由があって、
 @電源ON時、Q1での電圧降下を抑えたい(=十分なVGSを加えたい)。
 A電源OFF時、DC-DCモジュールの On/Off 端子に十分な電圧を加えたい。
という気持ちだったのだが、これは見直しが必要だな。


DC-DCモジュールの出力 +5V、+3.3V、+5VSB、-12V は優秀。さすがである。

実負荷試験

いまいち心配な結果が出たが、ものは試しと実負荷試験をしてみる。
マザーボードは、手元にあった中から、あんまり電気を喰わなそうなやつをチョイス。



ずいぶん古い世代のマザーだが、詳細は分からない。検索しても情報がほとんどヒットしない。
その昔、電脳売王の(今は亡き)伊勢崎店で、\199で投げ売りされていたもの。
安さにつられてゲットしたはいいが使い道が無くて、処分しようかどうしようかと思っていたのだが、ようやく役に立った。

あとはVGA出力にディスプレイをつなぐ。

これで「起動するか否か」が最低限確認できる状態になったので、マザー上の「PWR」ピンヘッダを
みの虫クリップでちょん、とGNDに落として、スイッチOn。

「ピッ」とビープ音がして、起動した。
起動デバイスが何もないので、当然エラーで止まるけれど。

この状態でしばらく放っておく。
PSU基板上のDC-DCモジュールをさわってみると、そこそこ熱いが触っていられないほどではない。
結線の誤りなどはなく、期待通りの動作はしているようだ。

では、

性能を検証

してみたい。

まずは各出力端子の電圧変動をデジタルテスタで測ってみた。まとめると下表のとおり。
「電源OFF時」は、マザーボードの電源を投入する前。
「電源ON時」は、投入してしばらくほっといた後。

電源OFF時 電源ON時
ACアダプタ電流 0.28[A] 2.28[A]
ACアダプタ電圧 12.17[V] 11.82[V]
+12V 8.35[V] 11.77[V]
+5V 4.194[V] 5.017[V]
+3.3V 1.137[V] 3.312[V]
+5VSB 5.017[V] 5.022[V]
-12V 0.125[V] -12.06[V]
PWR_OK 0.000[V] 3.542[V]
PS_ON 8.09[V] 0.098[V]

まず、電源ON時のACアダプタの出力は 11.82×2.28=26.9[W] (以下全て有効3桁。) となる。
11.82[V] という電圧はやや低いと思うが、そもそも最大出力が 3.33[A] とあまり余裕が無いので、これはやむを得まい。

PSU全体の効率を 90% と仮定すれば、マザーボードの消費電力は 26.9×0.90≒24.1[W] ということになる。

それよりも大いに気になるのが、「電源OFF時」にも、一部の出力端子に結構高い電圧が出ていることである。
「+12V」「+5V」「+3.3V」の「電源OFF時」の値を見て欲しい。

電源OFF時 電源ON時
+12V 8.35[V] 11.77[V]
+5V 4.194[V] 5.017[V]
+3.3V 1.137[V] 3.312[V]

赤字の部分。本来ここは全て 0[V] であって欲しいところである。
+12V端子は前述の理由でまあ予想通りとして、+5V、+3.3VについてはDC-DCモジュールの特性から言って、
こんな半端な電圧(回路定数で決まる値とかけ離れた値)を出力することは、ちょっと考え難い。
おそらく、+12V 端子から出ている電圧が、マザーボード側の回路を介して回りこんでいるのだろう。

Q1のスイッチ動作について。「電源ON時」の Q1 による電圧降下は

VDS=11.82−11.77=0.05[V]

ここで VGS=-6[V] であり、ゲート温度を約60℃と仮定すると、ドレイン−ソース間抵抗RDSはデータシートから
おおざっぱに 0.04[Ω] 程度と推定できる。
(データシートから転載。)
となると、ドレイン電流は

 ID=0.05[V]/0.04[Ω]=1.25[A]

Q1による損失電力は

 PD=0.05[V]×1.25[A]=62.5[mW]

となる。まあイイ線だろう。

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