アンプを作る・partU

作業開始:2019/01/03 掲載:2019/10/06

回路設計C‥アッテネータ

アンプ本体のゲインが目標を大幅に上回っている分、入力を減衰させる必要がある。
「減衰させてから増幅する」という、よく分からない事態だが、現実にはこういったことはわりとよくある。

アンプ本体=約40dBを、トータルで20dBまで落としたいので、アッテネータの減衰率は
20−40=−20dB ということになる。電圧比で言えば1/10 だ。

ただ「トータルで20dB」というのも前提条件が正しいのかどうかわからないし、
今後動作確認やら何やらをやるのに、万一音がでかすぎると何かとやりづらいので、
減衰率は大きめに設定することにした。
とりあえず 1/20(−26dB)程度とする。

図1

図はいろいろと省略気味。

回路設計D‥差動入力化

信号ソースが差動出力なので、アンプもそれに対応する必要がある。

この手のアンプICはシングルエンド入力で使うのが標準だが、回路自体はたいてい差動入力である。
ただ反転入力側はNFBのみに使い、信号が入力されることが通常ないってだけ。

そんなわけで、まず思いつくのはこういう方法。

図2

帰還抵抗R3にR4を組み合わせてアッテネータとし、反転側にも信号を入力する。
なお「-input」を追加した都合上C2の位置が変わっているが、ゲイン計算上はどちらでも同じ。

帰還回路側から見た場合、R3とR4が並列になるので、NFB量が若干減りオーバーオールゲインは増す。
R3//R4 = (3.6k×180)/(3.6k+180) ≒ 171Ω
厳密にはR4に信号源のインピーダンスが直列になるので、3.6kΩプラスアルファになるのだが、
プラスアルファがいくつになるのかわからない。
ただ、イヤフォン用だからおそらくほぼゼロか数Ω程度と思う。なので無視。

オーバーオールゲインはデータシートに従えば
(Rnf1+Rnf2+171)/(Rnf2+171) = 20201/201 ≒ 100.5→40.04dB となる。

R1とR2からなるアッテネータの分圧比を掛けてやると
100.5×180/(3.6k+180) ≒ 4.79→13.6dB

ただしこれは非反転側入力つまり「+input」信号についての話。

反転側「-input」についてはすこし事情が異なる。
帰還回路の途中に信号を注入していたり、しかもそれが抵抗R4を介してたりで一見ややこしいが、
テブナンの定理を使えば以下の通りシンプルに書き換えられる。

図3

信号源「-input'」にわざわざGND記号を追加したのは、信号源を介してちゃんと帰還回路ができていることを強調したいため。

反転入力に対する増幅率は非反転側とは計算が違う。
Rnf1/(Rnf2+171) ≒ 20000/201 ≒ 99.5

-input' = -input×R3/(R3+R4)なので、トータルでは
99.5×180/(3.6k+180) ≒ 4.74 → 13.5dB

で非反転側に対して微妙に低い。
R1〜4のいずれかを微調整すればバランスは取れるのだが、わずかな差だし気にしないことにする。

結合コンデンサC1、C2について

両者で容量が100倍も異なるが、これは非反転側と反転側で、入力ラインのインピーダンスが全く異なるためだ。
非反転側はほぼ無限大なのに対し、反転側には帰還電流が流れるためインピーダンスは格段に低い

その値はおもに帰還回路の抵抗そのもの(この場合 R3//R4 と Rnf2 の直列 = 201Ω)なのだが、
非反転側への入力にも大きく左右される。
例えば位相が反対でレベルが同じ(差動出力なら普通)だった場合、インピーダンスは半分になる。

つまりC2はインピーダンス100Ω程度の信号ライン上に割り込んでいるわけだ。低域でのリアクタンスを考えると
47μFでも物足りないくらいである。

結論

大きな問題はなさそうなので図2の回路

で組んでみることにする。








組んでみた。


部品の大部分はこいつからもらった。



ヒートシンクを貼り付けたのはただの気分。このIC、一部のピンが幅広になっていて

これを多めのハンダで基板の銅箔に着けることで、放熱をさせる仕様。
しかし今回は万能基板のため銅箔の面積が小さく、放熱効果が望めないので
代替手段としてヒートシンクを付けたもの。おそらく発熱はそれほど無いとは思うのだが。

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